先日質問サイトで「
歯肉炎と歯周病の違いは何ですか」と言う質問がありました。
「
アァ、そういえば、みんなどう答えているんだろう」と幾つかのサイトを検索して、とんでもない事が判ったのです。
みんな、
異口同音に「歯肉炎は歯周病の前段階」と答えているのです。
もちろんそれは間違いではありません。私も患者さんにはそのように説明しています。
しかし、あらためて「
歯肉炎と歯周病の違いは?」と聞かれた時
、「歯肉炎は歯周病の前段階」と答えたのでは国家試験は通りません。炎症とは『
発赤(赤み)』『
腫脹(腫れ)』『
疼痛(痛み)』『
発熱』『
機能障害』の五大兆候を伴った病状を言います。
しかし、これらは必ずしも自覚症状を意味するものではなく、患者さん自体に感じられるのは
発赤と
腫脹くらいで
痛みや
発熱を感じる頃には
歯周炎に移行している場合が多いです。更に
機能障害は患者さんにも医者にも判り辛いものです。。
つまり、
赤く腫れた状態を炎症と呼ぶのです。
歯周病は歯肉炎と歯周炎を含む、歯を支える組織全体の病気の総称です。
従って、質問にあった「歯肉炎と
歯周病の違い」は「歯肉炎と
歯周炎の違い」というのが正確な表現です。
では、
なぜ歯肉炎から歯周炎に移行するのに、歯肉炎が歯周炎の前段階というのが間違いなのでしょう。
実は
歯周炎は細菌感染によって起こる病気であるからです。
細菌感染を伴わない歯肉炎には以下のようなものがあります。
萌出性歯肉炎…乳歯の萌出時や永久歯の転換期に起きる歯肉炎です。
思春期性歯肉炎…成長に伴い、ホルモンバランスが変ってきて起きる炎症です。
妊娠性歯肉炎…妊娠によってホルモンバランスは変わる事によって起きる炎症です。
薬物性歯肉炎…高血圧やてんかん等の薬の副作用で起きる歯肉炎です。
これらは非感染性の歯肉炎で、
経年的に、或いは出産後、永久歯列の完成後に自然に消えていきます。
薬の副作用によるものは薬を止めるか、副作用のない薬が発見されるまで消える事はありません。
私は
これらを歯周病として扱うのは良くないと考えます。
これらの炎症に必要なのは「
管理」であって
治療ではありません。※
もちろん、炎症が激しい場合には抑える手立てをしなければなりませんし、その方法は歯周炎と大差ありません。
しかし、それはあくまでも「
管理」の一環であり、
歯周病治療ではないのです。※
皮膚の炎症も軽い場合にはあまり積極的な処置は行いません。
それは炎症が治まれば健康な状態に戻るからです。
軽い皮膚炎で切除や移植を持ち出す医者は恐らく居ないのではありませんか?
歯肉炎の管理も基本的に清掃と定期観察だけです。
歯周炎のように切ったり張ったりするのはおかしな事です。
しかし、
油断をしてはいけません。
歯肉炎はいずれも歯肉の腫れを伴い、
歯肉と歯との間に正常ではない溝を作ります。これが
歯周ポケット※※です。
歯周ポケットは歯ブラシが届き難く、不潔物が溜まって細菌感染を起こしやすくなっています。
管理が不十分で細菌感染を起こしたものが歯周炎です。
つまり、以下のように変ります。
萌出性
歯肉炎→萌出性
歯周炎思春期性
歯肉炎→思春期性
歯周炎妊娠性
歯肉炎→妊娠性
歯周炎薬物性
歯肉炎→薬物性
歯周炎歯周炎に進行してしまうと、やがて歯を支える骨(歯槽骨)の吸収を招き、歯がぐらついたり、抜ける事になります。
歯周病の治療には歯肉を傷つけたり、歯肉包帯と呼ばれるもので歯肉を被う処置が伴う事が多くなります。
しかしこれは、歯磨きが届かない場所を作る事になり、細菌感染のない歯肉炎を細菌感染を伴う歯周炎にしてしまう危険性も併せ持っています。
だからこそ、
歯肉炎の段階での管理が最も重要であり、歯肉炎と歯周炎の違いをしっかり把握する事が歯医者にとっては大事なことなのです。
・※印の解説
posted by なんちゃって歯医者 at 00:41| 新潟

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